鈍色のバタフライ
今日は久しぶりにスマートフォン向けゲームの感想です。
といっても元はガラケー用のノベルゲームなのですが、今回紹介するのはその移植版。
ノベルゲームという題材の都合上、ネタバレは記事の後半になりますので
プレイしてみようかなと思われる方は前半だけ読んでみてください。
ネタバレ部分は注意書き入れます。
さて、鈍色のバタフライはいわゆる「デスゲーム」を取り扱ったノベルゲーム。
デスゲームとは「本物の殺し合い」を強要するようなルールのもとで行われるゲームのことで、メジャーどころだとダンガンロンパとかですかね。
クローズドサークルに閉じ込められた主人公たちは、何者かの主導のもと殺し合いのゲームをさせられることになります。
もちろん抵抗するような余地は残されておらず、ルールを破ったり参加を拒絶したりすると殺されてしまいます。
あくまで相手は人間なので、ホラーというよりはサスペンスですね。
主人公たちが強制的に参加させられるのは「バタフライゲーム」と呼ばれるもの。
登場人物それぞれに役割がランダムに割り当てられており、
参加者は誰がどの役割なのかを推察しながら、ゲームクリアの鍵となる「首謀者」を見つける。
ルールはざっとこんな感じ。
・プレイヤーには全員に特殊な能力を持った役割が与えられる。
・「首謀者」は毎晩一人を任意に殺すことができる。
・「首謀者」を告発できればその時点での生き残りは全員解放される。
・期限までに他のプレイヤーを全滅させられないと「首謀者」が死亡。
・告発に失敗すれば告発したプレイヤーは死亡。
プレイヤーの中には「首謀者」から狙われても助かる能力だったり、
一人だけ誰がどの能力者か見抜けたりと色々な能力を持っており、
上手く組み合わせることができれば「首謀者」を封殺できたりと能力は多様。
ただし互いのプレイヤーは誰がどの能力者かはわからず、自分から能力をばらすことは出来ても証明はできない。
(能力を使うには鍵を閉めた個室に閉じこもる必要がある)
上手く他人と連携することができればゲームを有利に進められるものの、
大半の能力はゲーム中一度しか使えない上に、果たして協力を持ちかけた相手は信用していいのか、
実は「首謀者」が嘘を付いているだけなのでは…などと、
プレイヤーの間に疑心暗鬼を産むようにできています。
ここで重要なのが、登場人物全員が仲良しグループで構成されているということ。
「首謀者」になってしまった人は、誰かを殺さないと自分の命が危機に晒されることになります。
ましてや「首謀者」は「自分以外全員が生還するための鍵」のため、仲間の誰かが裏切って自分を告発しようとするのでは…と追い詰められていく。
一方「首謀者」以外のプレイヤーは、いつ自分が「首謀者」に狙われるかわからないまま、
どうやって「首謀者」を見つけるのか、見つけたとして告発=殺すことができるのか、と追い詰められていく。
圧倒的な能力を与えられた一人と、それに抗わないと毎日死の危険が高まる八人、
という構図からスタートして、仲良しグループだったはずの主人公たちは
少しずつ人間関係を歪ませていくのです。
というとちょっと鬱々しすぎる感じにも読み取れますが、実際読んでいて落ち込むようなことはそうそう無く。
目の前に配置される情報や謎、登場人物の側面。
それらが果たして本物なのか、嘘なのかを頭のなかで疑いながら読み進めていくのは、とても楽しいです。
登場人物全員が既知の関係だけあって、基本的には互いが互いを信頼しあっています。
それだけにそれが崩れる展開は惹かれるものがありますし、
人間関係が変わってしまったらそれもまたショッキング。
本作の登場人物はみんな「性格が一転する全く別の顔」とかがいかにもありそうな、
「あざとい」キャラクターデザインをしているんですよ!
爽やかな笑顔だったり、軽薄な態度だったり、仲間思いだったり、
そういうのがぐるっと一転して狂気全開、なんて展開がいかにもありそうな!
バタフライゲームはそういう、普通に生活してたら知らなかっただろうし、
知らないままでよかった他人の一面を無理やり見せつけるゲーム。
仲間を信じたいのに信じられなくなったり、
普段はあんなキャラなのにこんな顔もあったのか、なんてことも。
もちろんデスゲームである以上、話を進めれば登場人物たちは死んでいきます。
自分のお気に入りのキャラが死ぬかもしれないし、もしかしたらそいつは「首謀者」かもしれない。
この手のゲームでは「こういうキャラは死なないだろ…」って奴も容赦なく死にますので、
最後の最後まで緊張の糸が途切れない読み応えのあるノベルゲームとなっております。
大体通してプレイして5時間はかからなかったと思います。
途中選択肢は出てきますが、間違った方を選ぶとバッドエンド、
正しい方を選ぶと続くというシンプルな構成。
そう、鈍色のバタフライはマルチエンドではありません。
その分サクッとクリアできたり、クリア後は裏モードが解禁されたりと
話の厚みそのものは充分です。
ちょっと気になった点としては、メインキャラ全員が既知の仲って設定ゆえに、
ゲーム開始早々いきなり9人全員揃った状態で話が始まること。
覚えきれねーよ!
ゲームだから顔はすぐ覚えられるけど、
キャラクターによって名前で呼ばれるキャラと苗字で呼ばれるキャラがいて、
更にそれぞれにゲーム上割り振られた役割があるものだから
全員覚えるまで結構大変でした。
また、元はガラケー用と古いゲームのため、キャラデザもちょっと古いです。
もう一つ、媒体ゆえの制限でしょうがスプラッタな絵は一枚もありません。
殺されそうになっている絵や出血シーンのある絵はあるのですが。
そもそも本作の殺しは基本的に「毒」のため、死体の損壊はほぼありません。
グロ期待で遊ぶゲームではないというお話。
ではここからはネタバレも含めた話を。
文字色が背景色と同じ色になってますので、Ctrl+Aあたりで反転させてください。
以上、ネタバレ終わり。
また本作には2週目専用の裏モードがあり、それをONにしておくと
ストーリー中語られなかった、主人公以外のキャラクターの内面が見られるようになります。
というかこの裏モードまで読んで完結、という感じで、
裏モードを読まないとあの時何があったのか、なぜあんな展開があったのか、
といくつか不明なまま終わってしまいます。
本作は未読スキップが無いので、2週目は基本スキップしながら
裏モードで解禁されたテキスト部分だけを読むことができます。
これが結構なテキスト量で、あの時から「首謀者」はこんなこと考えてたのか、とか
こいつ影でこんなことしてたのか、という色々を楽しむことができます。
このシステムは他のノベルゲームでもやって欲しいくらい魅力的でした。
題材が題材だけにこういうの苦手だ、っていう人もいるかもしれませんが、
スマホゲームだけあってプレイへの敷居は低く、電車での移動中とかトイレなどの短い時間でもちょくちょく読み進められます。
途中までは無料で読めますので、ぜひ試してみてください。