感想日記

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東京クロノス 2019/05/16 



久しぶりにVRゲームのお話。
VRはやっぱり酔うし、コンテンツまだ少ないし、コントローラーのバッテリーもすぐなくなるので中々長時間打ち込んでプレイ、というのが難しいんですよね。
それでもちょっとずつタイトルは増えてきているし、新鮮な体験ができて楽しいです。

ちなみにネタバレ要素はページ末尾に、トグルボタンで隠してあります。
居ないと思うけど、ブラウザでJavascript切ってる人は表示されないかも。

東京クロノス


「東京クロノス」はまだまだ珍しい、和製VRゲームです。
ジャンルはビジュアルノベル。
世のVRゲームは大抵FPSによる戦争モノかゾンビモノなので、ビジュアルノベルというだけでもう新鮮。

本作は、誰も居ない渋谷に閉じ込められた幼馴染グループ8人による群像劇。


そう、群像劇。
このゲームはVRコンテンツにしては更に珍しく、プレイヤー=主人公ではありません。
プレイヤーは幼馴染グループそれぞれの主観視点から、物語を断片的に見ていくことになります。

さて、VR画面で文字を読むというのは中々大変そうに見えますが、テキスト欄の位置はある程度調整可能だし、カメラへの追従機能もしっかりしてる。
そのあたりのインターフェースはしっかりと練ってある感じです。
見た目のかっこよさと可読性を両立してありました。

フルボイスじゃないのは惜しいところだけど、多分フルボイスにするとプレイ時間が長すぎて疲れてたと思う。
その時の視点になっているキャラだけボイスあり、ということで演出意図もわかったし。

ライトノベル的ストーリー


人のいない渋谷、世界を覆う鏡の壁、意味深に集められた幼馴染たち。
そして問いかけられる「私は死んだ。犯人は誰?」というメッセージ。

というところから物語が始まります。

どことなくデスゲームものっぽいですが、方向性としてはサスペンス。
自分たちが閉じ込められた渋谷の謎、消えていく仲間、「犯人」とは。
そういった謎を追いかけていくスタイルの物語です。

 

話の規模的にもシナリオ量的にも、多分文庫本一冊くらいの量か。
バッドエンド直行の分岐がいくつかあって、その全部を見てトゥルーエンドも見て、プレイ時間は10時間弱。

個人的には「腹七分目」というところで、4000円という値段も加味すると、もうちょっと展開かシチュエーションの幅が欲しかった。
閉鎖環境が舞台なので、シチュエーションはしょうがないんだけど。

キャラクター

登場人物は全員が高校生。
少しダンガンロンパ的な、ビビッドな色使いとビジュアルが印象的。

CGモデルもLAM氏のシャープな絵柄を割と再現できていると思う。
特に女の子の顔の造形は見事。
それでもローポリ感はどうしても拭えていないけど、VRで8人を同時に画面に収めるとなると大変だったりするんだろうか。

櫻井響介


本作の主人公。
群像劇ではあるが、基本彼の視点で物語が進む(たまに他の子に切り替わる)。

前述のとおりきちんと設定とバックボーンのあるキャラクターで、プレイヤーが自分自身と重ねるようにはできていない。
これは結構挑戦的なことだと思う。
不快感のあるキャラクターではないのでそこは安心していい。

二階堂華怜


みんな大好き黒髪ロング姫カット。
これで声が石川由依なんだから誰も太刀打ちできない。

主人公の記憶にある二階堂と、渋谷に閉じ込められた今で少し様子が異なっており、なぜか主人公を避けようとする。

桃野夕


幼馴染グループの中でも主人公と一番長い付き合いがある女の子。
負けヒロインっぽいとか言うんじゃあない。

ギャルっぽく見えるけど実はそういう要素は一切ない。
ネタバレになるので後述するけど、登場人物の中でもとびきりものすごい秘密を持っている。

東国ユリア


緑髪で科学者枠。あとメガネで中国語だったら完璧だった。

自分たちが閉じ込められたこの世界を調査研究したいと思っており、序盤はこの子ベースで物語が進む。
でも中盤も後半も美味しい出番があるのでほぼ主役な気がする。

真実の探求にしか興味がないように見えて、意外と仲間たちとバカなことをやるのも楽しんでいたり、主人公に大きなヒントをくれたり、かと思いきやとある場面においては繊細な顔を見せたり。
私は登場人物の中ではユリアが一番好きです。
この子メインのスピンオフが欲しい。

神谷才


生徒会長で秀才、人の才能を見抜き役立て、線の細い男子で声も朴璐美というあざとさの結晶。

彼も二階堂のように、平時とこの世界に来てからで雰囲気が変わっており、ちょっとネタバレすると二階堂とは別の理由で日頃とは所作が変わっている。
この「普段と何か違う」ギミックは普段を知らないと気付きようがないので、劇中のキャラが勝手に違和感を抱くだけという、勿体無いギミックだった。

両角愛


副会長で神谷のシンパ。
幼馴染グループの一員のくせに徹頭徹尾神谷にしか興味がないという、割と珍しいキャラクター。

蔭山哲


生徒会メンバーで彼も神谷のファン。
両角ほどじゃないけど、彼女と合わせて神谷のキャラ付けの一環みたいなところがある。

両角とは違って、彼は本編中で成長エピソードがあったりと割と出番多め。

街小路颯太


大柄な体格をした、わかりやすいフィジカル担当。代わりに直情的。
何も考えず元気でいてくれる一服の清涼剤みたいな男。

ロウ


幼馴染グループの中にいなかったはずの「9人目」。
声が木村良平なのでとてもエロい。
彼の目的を見抜くことも物語の本筋のひとつであるキーマン的キャラ。

 

みんな個性的で、かつエピソードの主役を担えそうな子ばかりなのですが、ゲームが閉鎖環境を舞台にしたサスペンスなので、良さを発揮する機会に恵まれないキャラが多かった。


逆に状況を武器にできたキャラが夕とユリアで、彼女らの良さは本編で存分に味わうことができたと思う。
特にユリアはこの異常な状況を分析、説明しようとしてくれるポジションなので、単純に出番も多かった。

割りを食ったのは両角、街小路かなあ。
特に両角は「神谷の仕事の補佐」が個性であり武器なので、この世界では神谷の意見に賛同する以外にやることがなかった。

これはもう本当に勿体無いというか、できればゲームの前に前日譚としてみんなが仲良く集まっている短編小説とかを読ませて欲しかった。
久しぶりに集まった幼馴染グループの中に違和感があったり不和が生まれたり、というのは、その前提となる仲の良さをプレイヤーが知っててこそだろう。
本編中、回想でそういうシーンが見れはするのだが、そのタイミングでは遅いと思う。
とはいえ回想シーンからゲームが始まっても嬉しくないけど…。

本編中のキャラクターに不満があるわけじゃないけど、もっと良い見せ方あったんじゃないかと思ってしまう感じでした。

VRゲームとしての「東京クロノス」

中々難しい判断なのですが、私個人としてはビジュアルノベルとして見れば80点、VRゲームとして見れば40点、というところ。


前述のとおりビジュアルノベルとして見た場合、魅力的なキャラデザインと先が気になるストーリー、ここでは書かないけど結末まで含めて満足度は高かったです。

ちょっと物足りなく感じた、とも書きましたが、つまりもうちょっと欲しくなるくらいには良かったのです。
実際のところ、VRはプレイするだけで疲れるので、これくらいがいいのかもしれないけど。

 

一方VRとして見た場合は、厳しい評価をせざるを得ない。
肝心の「その世界に自分がのめり込んでいる」感じがしないのである。

プレイヤーは櫻井響介の視点で物語を追っていく。
けど、櫻井響介はプレイヤーのアバターではなく、自分で考え、行動し、好き嫌いも過去も今もある登場人物の一人。
彼とたまたま思考もバックボーンも声も完全に一致する人間でない限り、没入感は得られない。


かわいいヒロインたちがこちらを覗き込んできたり、やけに挑発的なロウがこちらをじろじろ見てきたりはするけど、彼らが見ているのはプレイヤーではなく、あくまで響介。

どちらかというと、幽霊にでもなったプレイヤーが響介に取り付いている、とか、人の過去の記憶をデバイスを通して盗み見ている、という雰囲気があった。
そういう路線のSFだったなら、VRゲームとしてビジュアルノベルを展開した意義はあっただろうと思う。

例えばギャルゲーをやるとき、プレイヤーは自分と似ている!と思わなくとも主人公に感情移入して物語の世界へ入っていきます。
これはギャルゲーが長年の積み重ねで「そういうもの」として認知されているのもあるけど、そういう作品は得てして「主人公の個性がひかえめに」デザインされています。

一方、櫻井響介は個性豊かな仲間たちに劣らない造形を付与されており、劇中できちんとひとりのキャラクターとして存在しており、彼の掘り下げがされたり、過去が語られることもあります。

VRゲームをやる側の心構えとして、ある程度「主人公は俺だ」という気持ちが前提にあったことも否定できません。

そういった前提と、櫻井響介という個性が馴染まなかったということ。
彼は俺ではなく、この物語の主人公なのです。

それはVR用HMDを通してこの世界を見ている「俺」の不在証明でもありました。

あとこれはゲーム側の設定が悪いのか、こちらのVRデバイスの設定が悪いのかわからないけど、キャラクターが異様に巨大に見えた。
背の高さこそ自分と同じくらい(ユリアはちょっと背が低く、街小路は長身など見てわかるくらい)なのだが、妙にデカく感じる。
頭身だけ合わせた着ぐるみを見ているかのような感じで、これも没入感を削いだ。
これは設定でどうにかできるよ、ということであれば誰か詳しく教えて欲しい。

そしてこれはとても重要なことなのだが、本作はカメラの方向に関するトラッキングのみで、位置情報までは検知しない。
よってルームスケールの中を歩いてキャラに近づいたり、離れたりということはできない。
これも没入感を削ぐ要素の一つだった。

 


逆に本作がVRとしてとても印象的な演出をしてくれたのが、OPアニメ。
本作はOPが2つ、EDが2つあるのだが、特にOPがすごかった。


こちらは本編とは対照的に、徹底的にVRならではの演出をしていて、とにかくカッコイイ。
プレイヤーの視点を中心に、キャラクターが入れ代わり立ち代わり現れたり流れていったり、一瞬こっちを見たり。
これはキャプチャでは伝えられないので、できれば実際に購入して自分の目で見てほしい。

VRが当たり前の時代になったら、こんな体験を何度もできるのかもしれないと思うと期待してしまう。
VRの良さを体験する手段として、OP単体で配信してほしいくらいだ。

 

ネタバレなしで言えるのはこれくらいかな。
ネタバレありで「ここが良かったぜ!」って言いたいことは山程あるのだけど、こういう謎を追う物語であけすけにネタバレするのはあまりにも下品なので、下に見えないよう格納しておきます。

ボタンを押したら展開するので、よろしくどうぞ。
一個「ネタバレしていいならここは本当ものスゲー良かった!みんな知ってくれ!」ってポイントがあるんだけど、クライマックスもクライマックスなシーンなのでさすがにオープンにはできない。

ネタバレあり感想はこちら

VRを活かした演出


何をおいてもまず言いたいことは、第四の壁を超えてきた妹ちゃんの存在だよ!

前述のとおり、本作はビジュアルノベルとしてはともかく、VRとしてはプレイヤーの介在する余地がなさすぎてイマイチだなあと思っていた。
そう思いながらクライマックスを迎えたところでの、妹ちゃんからの響介へではなくプレイヤーへのメッセージ。
あそこで初めて「東京クロノス」はVRゲームとして機能したと言っていい。

今まで響介を通して眺めているだけだったこの世界において、プレイヤーが存在していることを証明してくれたのがあのシーンだった。

突然エロゲーの話になるけど「古色迷宮輪舞曲」というゲームで似たような展開があって、あのゲームは「プレイヤーが選択肢やゲーム機能を通してトゥルーエンドに向かおうとすること」を「プレイヤーが主人公を手助けしてきた」と表現して、劇中のキャラがプレイヤーに話しかけてきてくれるのだ。
物語を登場人物だけのものではなく、プレイヤーも含めたみんなで組み立てたものだと宣言してくれた。

多分「東京クロノス」でも同じことをやろうとしたんだろう。
もうちょっとプレイヤーにできることの幅を増やして欲しかったけど。

最後に出てきた妹ちゃんのビジュアルがめちゃくちゃ好みだったのもあって、あそこはゲームをしていて一番胸の踊るシーンでした。

あと蔭山ルートでも、謎の影がプレイヤーを覗き込んでくるシーンあったよね。
「ゲームを眺める自分」という意識が強くなってくる頃合いだったので、するっと差し込まれたあのシーンはゾワゾワさせられて、半端なホラーゲームよりずっと怖かった。
あれも第四の壁を超えた演出だったけど、あの影は結局誰だったんだろう…。

幼馴染はやはり勝てないのか

そうだよ夕の話だよ。


今回メインキャラは全員幼馴染だけど、その中で一番長い付き合いなのが夕。
だからこそじゃないけど、あんな勝てないと思ってなかった。
彼女を選ぶだけでバッドエンドとかさあ!

というとこまで書いて思ったんだけど、結局のところ夕の中身って妹ちゃんだよね?
二人で逃避行したシーンは妹ちゃんの茶目っ気として説明があったし。
ってことはバッドエンド行った場合の全員皆殺しエンドは、あれも妹ちゃんの選択なのかな。実は結構やべー妹なのでは。

 

幼馴染グループがお互いの腹の底まで見せあってしまうクロノス世界での物語において、実は本人ではなかった夕だけ、みんなから置き去りにされてない?
みんなが元通りに現実世界へ帰った、という決着のせいで、夕だけ「知らぬ間にみんなが仲良くなって帰ってきた」という大きな割を食わされた感じがある。
これについてのフォローはなかったよね?

やはり幼馴染だからか…。

2周目でオープンになる回想シーン

「東京クロノス」は幼馴染グループの変化をテーマにしてる割に、元の姿が見れないのがいけない、と前述しました。
が、逆にクロノス世界での姿を見せたあとで見せられる、彼ら彼女らの素の姿は中々来るものがあった。

中でもユリアの妹・父への感情(一言で言えねえ)と、事故のあとの二階堂の選択。
この2つはとても良かった。

超然としていたユリアが、内面は寂しがりな女の子であるとじっくり見せつけられるのは中々いじわるで良かったし、記号的に見ていたぬいぐるみにちゃんと役割があるのも見事だった。

二階堂の選択も、あれは自分で自分を罰するために他に手段がなかったんだなあ。
いじめに加担していた連中はクソ!とかそういう話じゃなくて、多分二階堂の方からいじめるように煽ってたりもしてた。
それに巻き込まれてトラウマくすぐられた街小路かわいそう。

そんな中、ユリアと二階堂が二人図書館で勉強していたくだりは、辛辣な世界観と状況の中でとても穏やか、優しくて最高だった…。

まとめ

惜しいッ!

これに尽きる。
もうちょっとVRでの没入感の演出に凝ってくれたり、プレイヤーに響介を手伝う何かがあったなら「和製VR最高作品」と言っていいくらいになっていただろう。

つまりは「俺」にゲームプレイ上の役割を与えること。
最後妹ちゃんにあんな美味しいセリフを言わせるのだから、そこに焦点を合わせて、響介たちが至らぬところに神の視点を持ったプレイヤーが手助けをして真実はたどり着く、という構図にできたはずだ。

前述のとおりビジュアルノベルとしては十分よくできたものだったけど、VRゲームとしてみると物足りない箇所が多い。
視点をキャラと共有しているだけ、という印象が強かった。

VRでなくてもこの物語は成立するのだ。

VRというのはやっぱりプレイヤーが行動し、それにゲーム内が答えてくれる、というインタラクションが肝だと思うので、そこを充実させて欲しかったし、そうならないならVRデバイスを通して見るノベルに終止するという点を強調しておいて欲しかった。
ゲームの世界に入り込んで謎を追うぞ!と思って始めると「思ってたんと違う」となってしまう。

とは言えキャラもストーリーもいいものだったし、作品自体は好きになった。
キャラクターをもっと味わっていたい、という気持ちが強く出るゲームだったので、VRでキャラがおしゃべりしてるところを眺めるだけのモードみたいなのがあったら嬉しい。

続編が出たら買うと思うし、グッズもちょっと欲しくなっている。
神谷のスピンオフ小説が出るらしいけど、ユリアのも出してお願い。

あと後日談!
プレイヤーは今の響介がかっこいいリーダーしてるところをあんま見れてないので!二階堂へのいじめを止めて!妹をちゃんと弔って!みんなでファミレス行ってご飯食べる話を見せてください!

それをプレイヤーが妹ちゃんと二人で眺めて「よし!」ってできたら最高だと思う。

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